はじめに
脳卒中(脳出血)を経験すると、
正直、つらいことが一気に増えます。
私も2021年の年末に脳出血を起こしてから、
この4年間で、しんどいと感じることがたくさんありました。
ただ、実際に経験してみて思うのは、
脳卒中して一番つらいのは、
麻痺や不自由さそのものではない、ということです。
本当に厄介なのは、
痙縮による、ずっと続く痛みでした。
痛みが続くと、
無意識のうちに顔が険しくなり、
自分でも驚くほど不機嫌になります。
これは、性格の問題でも、
気合いや我慢の問題でもありません。
痛みは、それだけ人を追い込むものだからです。
しかもこの痛みは、
痛み止めがあまり効かないことも多く、
長く付き合うことになりがちです。
今日は、
そんな状態が少し楽になる考え方と方法を、
お伝えしたいと思います。
ヒントは、「脳内環境」にありました。
脳疲労が続くと、反芻思考に陥りやすくなる
脳卒中後の慢性的な痛みやストレスは、
知らないうちに脳を疲れさせます。
これを「脳疲労」と呼びます。
脳が疲労すると、
感情や思考を切り替える力が弱くなり、
同じ考えが何度も頭の中を回るようになります。
これが「反芻思考」です。
・あのとき、こうすればよかった
・また悪くなるのではないか
・この先、どうなるのだろう
考えても答えが出ないことを、
何度も繰り返し考えてしまいます。
反芻思考が続くと、
気持ちはどんどん重くなり、
眠れなくなったり、
痛みをより強く感じたりします。
これは意志の弱さではありません。
脳が疲れ切って、
止まれなくなっている状態なのです。
セロトニンとは何か ― 脳にブレーキをかける役割 ―
反芻思考が止まらなくなる背景には、
もう一つ大きな要因があります。
それが、
脳内ホルモンの一つであるセロトニンです。
セロトニンは、
感情や思考の暴走を抑え、
気分をフラットに保つ役割を持っています。
いわば、
脳にかかるブレーキのような存在です。
セロトニンがうまく働いていると、
嫌な考えが浮かんでも、
「今は考えても仕方がない」
と一度立ち止まることができます。
しかし、脳疲労が続くと、
このブレーキが効きにくくなります。
その結果、
考えが連鎖し、
反芻思考が止まらなくなるのです。
脳卒中後は、セロトニンが乱れやすい
脳卒中後は、
セロトニンの働きが乱れやすくなります。
理由は一つではありません。
痙縮による慢性的な痛み。
睡眠の質の低下。
生活リズムの変化。
小さなストレスの積み重ね。
これらが重なり、
脳は常に緊張状態になります。
その結果、
セロトニンが十分に働かず、
気分の不安定さや、
痛みの増幅につながります。
これは自然な反応であり、
気の持ちようでどうにかできるものではありません。
脳を助けてあげるには?
私が最初にやったことは、
とてもシンプルなものでした。
朝にバナナを食べて、
外に出て日光を浴びる。
それだけです。
バナナに含まれるトリプトファンは、
セロトニンを作るための材料になります。
朝日を浴びることで、
体内時計が整い、
セロトニンが働きやすくなります。
痛みが完全になくなるわけではありません。
不安がゼロになるわけでもありません。
それでも、
考えが暴走しにくくなる。
朝のしんどさが少し軽くなる。
その「少し」が、
一日の過ごしやすさを大きく変えてくれました。
脳卒中後、うつ状態になりやすいのは珍しいことではない
脳卒中を経験した人のうち、
約4割が、
うつ病や抑うつ状態になると言われています。
これは決して特別なことではありません。
慢性的な痛み。
生活の大きな変化。
脳疲労と反芻思考。
これらが重なれば、
気分が落ち込みやすくなるのは自然な流れです。
大切なのは、
これを性格や気合いの問題にしないことです。
セロトニンは、回復の「土台」を支える
セロトニンは、
気分を安定させるだけでなく、
うつ状態からの回復にも深く関わっています。
すべてを解決する魔法ではありませんが、
回復に向かうための土台を作ることはできます。
だからこそ、
落ち込んでから対処するのではなく、
落ち込みにくい状態を整える。
それが、
自分を守るための現実的な選択だと思います。
脳卒中後に誰もが感じる「易疲労性」は、脳疲労の一種
脳卒中後に感じる易疲労性も、
脳疲労の一種です。
これは悪いことではありません。
脳の中では、
損傷した部分を避けながら、
ニューロンが新しい回路を作り直しています。
少し動いて疲れる。
眠くなって休む。
また少し動く。
この繰り返しの中で、
脳は少しずつ効率のよい回路を作っていきます。
セロトニンがあると、
疲れきる前に止まりやすくなり、
回復のサイクルが少し楽になります。
完全に疲れなくなるわけではありません。
でも、少しマシになる。
この「少し」が、
回復期にはとても大きな意味を持ちます。
それは、脳が頑張っている証拠です
脳卒中後につらくなったり、
不機嫌になったり、
すぐ疲れてしまうのは、
性格や気合いの問題ではありません。
脳がダメージを受け、
必死に立て直そうとしている結果です。
どうか、
疲れやすい自分を責めないでください。
それは、
あなたの脳が、
今日もちゃんと頑張っている証拠なのです。


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